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ハッピーエンドにさよならを 歌野晶午 [読書]

ひさしぶりの読書ネタです

一編がサラっと読める短編集『ハッピーエンドにさよならを』をご紹介します
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爽やか路線の『葉桜の季節に君を想うということ』で超有名になった作者さんですが、これは後味の悪いお話ばかりを集めています

よくもまあ、こんなに悲しい話を作ったもんだと思いながら読みました


やるせない気持ちになるのは全てに共通しますが、特にそうなったのが「サクラチル」と「In the lap of mother」です

前者は決して幸せな人生を歩んできたとはいえない中年女性のお話です

駆け落ちして一緒になった男性が病気になり会社をクビになり、酒に溺れはじめます

妻である女性はパートを掛け持ちして生活をやりくりします

夫の暴力に耐えながらも頑張れたのは、一人息子の存在

やがて息子は、父がクビになったのは学歴が無かったからだと思い始め、勉学に励んだ末に東大を受験する

しかし落ちる

慶大や早稲田には合格していたものの、母を楽にさせたいからと東大を受け続ける

そして、長い月日が経ち、父と同じように酒に溺れ、暴力を振るうようになる

息子は東大受験には失敗を繰返し、女性はボロボロになりながらも働く

やがて女性にも限界が来て息子を殺してしまうが、自身は近所の人に助けられ死にきれず…


後者はパチンコに狂った母親の話

パチンコにまつわる不幸なニュースが流れる現代

自分は失敗はしないと、子供を側に置き、ヘッドホンを付けアニメを見せている

負けがこみ、取り返すために打ち続けるが、お昼になり「お腹すいた」と子供が訴える

しかしまだ負けているため、もう少ししたら美味しいものが食べられると説得する

その内に夕方となり、さすがにやめ時と思った母が子供と帰ろうとしたとき、その子はピクリとも動かない

あまりの空腹に耐えきれず、パチンコ玉を飲み込み窒素死してしまった…


本当にやりきれない話なんですが、ついつい読んでしまうところが、作者さんの妙なんでしょう

または、人間の中にある残酷性がそうさせるのかもしれません

辛い気持ちになる作品でしたが、ネタとなる事柄が今の世の中に溢れている現実が、やはり恐ろしいです
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